解体業を始めとする建設業界での質の低下の原因について。
元々私は建設業を行っていました。
とび職なんですが、何故、ここ最近建設業での事故が相次いでいるかについて、私が思う事を話したいと思います。
端的に言えば、技術を後世に残する為に指導しても、40代中盤から下の世代の職人が「自分達のやり方の方が正しいと考えて、話を聞かなくなったから」と考えています。
まず初めに、世代によって、価値観が大きく異なるんです。
我々世代は、今の80代以上の高齢者から技術を学び、人としても立ち振る舞いについても学んできました。
そして、その技術と考え方を後世の残す為に、何度も若い衆に指導してきました。
私達は、お金も大事だけど、それ以上に大切に考えているのは、無事故と若い衆を生きて返す事が大事なんです。
でも、下の世代は、多少無理しても利益の出るやり方をするんです。
安全よりも利益優先なんです。
例えば、足場材を投げている業者もいます。
これは私達の世代では考えられないんです。
投げて渡せば、下で受け取る若い衆は、肩に物凄い負荷が掛かります。
若いので、すぐに体が壊れるという事は無いですが、知らず知らずのうちに、負担が蓄積され、職人としての選手生命が短くなります。
で、身体が使えなくなって、現場仕事以外の営業職が出来ないなら、使い捨て。
結局のところ、今の若い経営者や職人はプライドが高すぎて、人の話を素直に聞けなくなっている様に感じます。
番線一つ縛るにも、クランプ一つ締めるにも、クランプの向きも、方づえの自在クランプの遊びを無くす事も、玉掛の時のシャックルの位置や向きもちゃんと意味があってやっている事なんです。
ただ締めればいいって訳ではないんです。
まあ、足場の倒壊のほとんどの要因、メッシュシートの施工が起因しています。
常用で待機している野丁場なら、天気に気を使って、事前に畳むことをしなければいけないですし、改修工事なら、現場監督の指示で、事前に畳むようにしなければなりません。
壁ツナギのピッチについても、規定どうりに施工できているか?ハサミ込みで誤魔化していないか?場合によっては、巾木などの撤去を検討しているのか?
退去前に、飛びやすい材料は、全て番線もしくは親綱で縛っているのか?
特にビケ材に多いのですが、足場の段を簡単に変えられるので、足場やの都合で「段」になって施工されていないか?
台風養生は出来ているか?
場合よっては、アンチの爪の部分まで、全て番線で縛ったりしますからね。
特に気を付けなければいけないのは、解体用の足場の場合です。
防音シートや防音パネルは、殆ど風が抜けません。
もろに風圧を受けます。
なので、本当に注意が必要なんです。
ちなみに映像のほとんどは改修工事なんですけど、改修工事は予算との兼ね合いもあって、結構いい加減なんです。
スーパーゼネコンの野丁場を経験してきた私から見ると、
安全管理については、
スーパーゼネコンのビル系野丁場>>>>>>>まったくもって越えられない壁>>>>>>
マンション系の野丁場>>>
戸建てのハウスメーカー>
改修工事>>>>>
町場の戸建て工事
これぐらいに差がありますね。
話し戻しますけど、そして、それを後押ししているのが、60代〜70代の経営者や周りの職人で、その世代が彼らを庇っているから、余計に若い職人は言う事を聞かなくなります。
この世代の人達によく言われるのは、「怒るな」「殴るな」ですけど、誰だって怒りたくないし、言いたくも無いんですよ。
でも、そういうこと言う貴方達世代は、私達が若い頃、散々、怒鳴りまくっていたのにも拘らずね。
少なくとも、この世代の人達と比べて、ビックリするぐらい優しく指導しているけどね。
ほんと、この世代の人は言っている事とやっている事があべこべ過ぎな人多いんだよね。
人が寄り付かなくなってから、反省して態度変えているんじゃないっての。
信念をもって指導に当たってくださいよ。
話戻しますけど、若い衆が、危ない事をしていて、普通に注意しても聞かないから、段々トーンを上げて言うんです。
突然、貴方達が、そのような現場を見れば、何も考えないで怒鳴っている様に思うかもしれませんが、実際には、そうではないんです。
現場作業は危険との隣り合わせなので、普通に言っても判らないなら、怒鳴ってでも判らせる必要があります。
結果として、皆が安全に作業できるなら、仕方ないんです。
指導している我々世代の人間が、60〜70代の世代に色々言われれば、それを目の前で見ている若い衆は、当然「自分の親方の言う事はおかしいのでは?」と思って言う事を聴かなくなりますよね?
で、我々世代も、「そこまで言うなら勝手にすればいい」となって、注意する人が居なくなると、彼らは自分達の考えるやり方で仕事を進める様になります。
もう注意する人が居ないので、彼らは、やりたい放題です。
そんな彼らのやり方を見て、この先この業界で若い衆を育てていけないなら、いても意味が無いと思って、辞めていった心ある職人が沢山いました。
で、その後、残った職人はというと、金ばかりを追い続けているので、費用の掛からない、つまり早く、少人数で立ち回れるやり方を推進します。
で、事故につながると。
私が、この業界を離れて、しばらく経って、久しぶりに手伝いに行きました。
私は5年程度しか鳶の経験が無いですけど、彼らは20年も経験があります。
しかし、現場で見たものは、悲惨な物でした。
あまりの進歩のなさや、おかしい工事の進め方にびっくりしたというより、呆れてしまいました。
こんな人間が親方なら、そりゃ、質が下がるし、事故にもつながるよな…って、納得できるものでした。
我々世代は、今の世の中から見れば厳しい部類に入るかもしれない。
そして、60代〜70代世代の人達から我々世代は、非常に厳しく育てられました。
その頃に学んだやり方や考え方を今でも信じていて、それを継承しようと思っています。
その当時より、論理的で優しい指導方法でですね。
なのに、何故60〜70代の世代の人達は、彼らを庇うんですか?
あなた方から教えられたやり方を、そのままやっているだけなのに。
それどころか、我々世代と比べて、本当に親切に優しく教えているのに。
技術や考え方を後世の残そうとする世代を隅に追いやった結果が、今の作業員の質の低下だと思いますけどね。
外国人だから仕方ないと考えているのかもしれないけど、それは無くて、外国人だろうが、日本人だろうが、しっかりと指導していれば、関係ないですけどね。
なぜなら、私の会社の半数は、外国人だったこともあるけど、指導者がしっかりしていれば、問題なかったよ。
この事による責任の一端は、あなた方にあると思いますよ。
何故なら、技術や仕事に向かい合う「姿勢」をというものの継承を出来なくしたんのだから。
これなんて、どうやったら、鉄骨が落ちるのよ。
吊りピースからシャックルで止めているはずだから、仮ボルト取り付ける前に玉掛外さなきゃゃ、落ちようもないだろ?
まさか、レンフロで荷揚げして引っかけたとかないよね?…
もしくは、イーグルを、ちゃんと締めてないとか?…
まあ、吊りピースあるから平気だと思うけど、手順を見直したら?っていうか、初心に立ち返ったら?
〇んでからでは遅いよ。
貴方だけではなく、他の人も巻き込んでしまうんだし。
今になって、騒いだとて、「何をいまさら・・・・こんなことは30年も前から解っていた事なのに…今になって文句言われてもね」って、我々世代の多くは、そう思っていると思いますけどね。
なるべくして、なった。
当時を知る私から見れば、そうにしか思えない。
「金さえ儲けられれば、構いやしない。」こんな風に考える業者が増えたのは、明らかに今の高齢者(60代〜70代)の指導によるものですけどね。
いろんな意味でね。
貴方達は、80代以上の世代から何を学んだんですか?
映像だけ見れば、外国人が悪い様に見えるかもしれないけど、それを指導する側にいた指導者に大きな問題があるし、金ばっかりを追い求める元請け業者からプレッシャーばかりかけられたら、事故だって起きるからね。
全ての原因の源は、「仕事に対する姿勢」だよ。
その一番大事な事を無くしてしまったら、これからもっと酷い質の低下になるよ。